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青鬼の褌を洗う女

坂口安吾の中で
自分に一番響く小説です



匂いって何だろう?
私は近頃人の話をきいていても、
言葉を鼻で嗅ぐようになった。
ああ、そんな匂いかと思う。それだけなのだ。
つまり頭でききとめて考えるということがなくなったのだから、
匂いというのは、頭がカラッポだということなんだろう。
私は近頃死んだ母が生き返ってきたので恐縮している。
私がだんだん母に似てきたのだ。
あ、また――私は母を発見するたびにすくんでしまう。
私の母は戦争の時に焼けて死んだ。
私たちは元々どうせバラバラの人間なんだから、
逃げる時だっていつのまにやらバラバラになるのは自然で、
私はもう母と一緒でないということに気がついたときも、
はぐれたとも、母はどっちへ逃げたろうとも考えず、
ああ、そうかとも思わなかった。
つまり、母がいないなという当然さを意識しただけにすぎない。
私は元々一人ぽっちだったのだ。




坂口安吾は
母という存在を憎み、誰よりも欲している
彼の書くものの、はしばしすべて
幼いときにあたえられるべき愛情をもらわなかったこと
それをこの人は断ち切らずに堕ちきって見つめる

常々この人の強さはどこからくるのだろうと考えていた

とても短絡的な結論をいうと、この人は「ただ、生きる」ということだけなのだけど


負の輪廻というものがあるならば
それを断ち切るのは花しかないのではと自分は思う

おしみない愛情をあたえてくれる
無条件に愛してくれる
その多くは、まず肉親から感じ学ぶのだろう

そこを飛ばした場合、
自分の人生を歩むために自分でコアをつくってゆく
だから引き戻るし、弱弱しい
少しの風に飛ばされる
作った核がそげる時がある
過去の想いにも囚われる
いつでも正しい光の中で顔をあげているだけの皮膚が無い
眩しい光が皮膚にヒリヒリ痛みを与える
核がないのだから
核をこれから作るのだから

そして惜しみない愛情を注ぐ対象を産み出しみつけ、または出会い、
自分が注がれなかった愛を他者に注げた時
輪廻を断ち切るための花が咲くのだと自分は思うのだ

自分は血は濃いものだと感じたことは無い
しかし何かに囚われてはいる
こんなことを考える時点で囚われているのだ
血など誰にでも分け与えられる
その「血」というものに価値を見出すのならば、
血など誰にでも分け与えることができるものだ
だから愛情も、誰にでも注げるのだと思う
自分の肉親である大事な人に
肉親ではなくとも大切な人に


というものを信じている

自分を支えてきたものは確かにこれだった
そしてこれからもそうだろう

輪廻は断ち切れたのか
それは終わらないとわからない


安吾のいう、死

死んだ先はなにもない
死んだらそこでおしまいだ
だからわたしは幽霊が嫌いだ
死んでも生きてるなんて、そんな幽霊は嫌いだよ

と、安吾はいう
わたしもそう思う


だから生きるのだ
生きてる間は生きるのだ
自分の裁量で生き、
諦めたのかと思いきや、
何一つ諦めないこの人の
強い強い生、そして厳しい生き方がとても好きだ
そして死んだらそこまでだ
死んだらなにも無い
死にも生にも意味なんてなく、ただ、「そういうもの」なだけだ、というところが好きだ
世間の正しさでなんて生きてはいない
倫理や体裁からはずれいていも強い
人が認める正しさで生きてはいない
それでも生きるのだ

この感情は憧れなどではない
愛しい

この人から感じる強さ
堕ちれば堕ちるほどに
堕落してそこからが本番だという強さ
それでも併せ持つファルスに
理屈や倫理などなにも響かないことを実感する


花を咲かすことができただろうか
自分は今でも咲いているか

時間がたって過去を振り返れば
死の間際、人生の終わりに
今この時は花が咲いているだろうか

退屈な風景をみているだろうか

わからないまま今はただ
その道を歩いている


「青鬼の褌を洗う女」
初老の男、久須美とその愛人のサチ子
久須美の魂の孤独をみてとり、優しい、そして冷酷な彼の孤独をサチ子はわかっている
自分の存在も孤独な彼を独りにしないものではない
「私の可愛いいオジイサン、サンタクロース」
「私の可愛いい子供、可愛いいアイスクリーム、可愛いいチッちゃな白い靴」
孤独のまま、わかりあう必要はなく
ただそこに存在しているお互いをみて
ふたりはこう呼び合う


私はだから知っている。彼の魂は孤独だから、彼の魂は冷酷なのだ。
「まだ眠むっちゃ、いや」
「なぜ」
「私が、まだ、ねむれないのですもの」
久須美は我慢して、起きあがる。
もうこらえ性がなくて、横になると眠るから、
起きて坐って私の顔を見ているけれども、
やがて、コクリコクリやりだす。
私は腕をのばして彼の膝をゆさぶる。びっくりして目をさます。
そして私がニッコリ下から彼を見上げて笑っているのを見出す。
私は彼がうたたねを乱される苦しさよりも、
そのとき見出す私のニッコリした顔が彼の心を充たしていることを知っている。
「まだ、ねむれないのか」
私は頷く。
「私はどれぐらいウトウトしたのかな」
「二十分ぐらい」
「二十分か。二分かと思ったがなア。君は何を考えていたね」
「何も考えていない」
「何か考えたろう」
「ただ見ていた」
「何を」
「あなたを」
彼は再びコクリコクリやりだす。私はそれをただ見ている。
彼はいつ目覚めても私のニッコリ笑っている顔だけしか見ることができないだろう。
なぜなら、私はただニッコリ笑いながら、彼を見つめているだけなのだから。
このまま、どこへでも、行くがいい。私は知らない。地獄へでも。
私の男がやがて赤鬼青鬼でも、
私はやっぱり媚をふくめていつもニッコリその顔を見つめているだけだろう。

私はだんだん考えることがなくなって行く、頭がカラになって行く、
ただ見つめ、媚をふくめてニッコリ見つめている、私はそれすらも意識することが少くなって行く。
「秋になったら、旅行しよう」
「ええ」
「どこへ行く?」
「どこへでも」
「たよりない返事だな」
「知らないのですもの。びっくりするところへつれて行ってね」
彼は頷く。
そしてまたコクリコクリやりだす。

私は谷川で青鬼の虎の皮のフンドシを洗っている。
私はフンドシを干すのを忘れて、谷川のふちで眠ってしまう。
青鬼が私をゆさぶる。私は目をさましてニッコリする。
カッコウだのホトトギスだの山鳩がないている。
私はそんなものよりも青鬼の調子外れの胴間声が好きだ。
私はニッコリして彼に腕をさしだすだろう。

すべてが、なんて退屈だろう。
しかし、なぜ、こんなに、なつかしいのだろう。



サチ子は愛を信じているわけではないが、なつかしく退屈な風景をみている

自分は愛を信じているが、今の場所からここにたどり着きたいと思う


青鬼の褌を洗う光景を
ただ生きて、そして最後に
なつかしく思い出す

今のこともなつかしく
そして退屈に
思い出すだろう




引用「青鬼の褌を洗う女」←リンクあり
著作がきれているため、青空文庫で読むことができます
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COMMENT

はろぅ♪

お引越し頑張ってるねぃ
飴風呂よりこっちの方が読みやすぃナe-75
字もおっきぃし~e-319
ぷサンは武者小路サンより坂口安吾サンの方が好きなんじゃなぃのe-349
なんてネe-282

| けぃこ | 2012/06/13 13:03 | URL | >> EDIT

けいこちゃん

はろう

> お引越し頑張ってるねぃ

ふふふ
まあね


> 飴風呂よりこっちの方が読みやすぃナe-75
> 字もおっきぃし~e-319

それはわたしの記事のアップの仕方の問題で
あっちでも字は大きくしようと思えばできるよ


> ぷサンは武者小路サンより坂口安吾サンの方が好きなんじゃなぃのe-349

けいこちゃん
これはね、そう単純な話じゃないんだよ
圧倒的にあこがれるのは武者先生なんだよ
でも確かに…
小説は安吾の方が揺り動かされる


> なんてネe-282

なんてね
合ってるかも

| おくやぷ | 2012/06/17 04:55 | URL | >> EDIT















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